南アフリカのワイン生産地域「ケープ・サウス・コースト」

【最終更新日】2024年4月14日

みなさんこんにちは。わいんとくすりです。

今回も前回に引き続き、南アフリカのワイン生産地域についてみていきたいと思います。

 

南アフリカのワイン生産地域は、ワイン法(Wine of Origin=W.O.)の1993年改訂にともない、西ケープ州、北ケープ州、クワズル・ナタール州、リンポポ州、東ケープ州、フリーステイト州の6つの「州域」(Geographical Unit)が誕生しました。

 

そのうちワイン生産の中心地である西ケープ州では、ブリード・リヴァー・ヴァレー、ケープ・サウスコースト、コースタル・リージョン、クレインカルー、オリファンツ・リヴァーの5つの地域(Region)が指定されています。

 

今回お話するケープ・サウス・コーストは南アフリカの最南部にあり、海からの影響を色濃く受ける生産地域です。

歴史的にみても比較的新しい生産地で、コースタル・リージョンに比べると知名度は高くありません。しかしながら、そのユニークで多彩な環境を有することから近年注目が集まっている生産地域になります。

 

この記事ではケープ・サウス・コーストの全体像と代表的な地区についてお伝えしたうえで、世界から注目されている理由を探っていきたいと思います。

 

初めにお断りになりますが、世界から注目されている理由については多分に私見を含んでいることをご了承ください。早速見ていきましょう。

 

南アフリカのワイン生産地域「ケープ・サウス・コースト」

ケープ・サウス・コースト概略

ケープ・サウス・コーストは前回紹介したコースタル・リージョンのステレンボッシュと接する西端から東端にあるプレタンバーグ・ベイまでは500kmもあります。

地域としては広大にうつりますが、地区としてみると西側(コースタル・リージョン側)に集中しています。

地図に示すオーバーバーグ群はケープ・サウス・コーストの西端にある群ですが、エルギン地区やウォーカー・ベイ地区などの有名産地を包括しています。

 

気候はインド洋と大西洋の2つの大海に接することから、海流の影響を大きく受けます。中でも寒流であるベンゲラ海流の影響により全体的に冷涼な海洋性気候です。

また、ケープ・サウス・コーストは大昔の大陸移動でアフリカ大陸の南端に島が衝突して形成された地形です。

海から数キロ内陸へいくと標高300mとなる地区や、そこに隣接する700〜1000m級の山々がみられます。その辺りでは昼夜の寒暖が差が大きい高山性気候となります。

 

主要となるブドウ品種は

白:シャルドネソーヴィニヨン・ブランリースリング、シュナンブラン、セミヨン

赤:ピノ・ノワール、シラー/シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンメルロー、サンソー

とほとんどが国際品種となっています。

 

次からそれぞれの「地区」(District)についてみていきましょう。

 

Overberg:オーヴァーバーグ地区

オーヴァーバーグ地区はケープ・サウス・コーストの西端に位置しており、東西で160kmにも及ぶ広範囲の地区です。

その中でも高品質であったエルギン地区、ウォーカー・ベイ地区がここから独立しました。

 

標高500mを超える冷涼な高山性気候をもつエランズクルーフ小地区や、山間の起伏・丘陵地帯を利用してブドウ栽培が行われるクライン・リヴァー小地区の高品質なワインが生産されており、注目を集めています。

 

Elgin:エルギン地区

ケープタウンから南東へ70km、ステレンボッシュに隣接した生産地域です。ワイン以外にもリンゴや洋梨の栽培が盛んです。

 

大西洋からは20km程度しか離れておらず、海からの影響が強く冷涼で、真夏でも最高気温が30℃を超えることは稀。降水量も平均1000mmと南アフリカの他の生産地域に比べて多いことも特徴です。

 

ホッテントット・ホランド山系に囲まれるように位置する高台の土地で、土壌はテーブルマウンテン砂岩と、鉄分を含む赤茶色のボッケフェルト頁岩が分布しています。

(頁岩:けつがん 堆積岩の一種で、堆積面に沿って薄く剥がれる性質のあるもの)

 

昼夜の寒暖差が大きく、冷涼なため、エレガントで風味豊かなワインが生産されています。世界的にもシャルドネリースリングソーヴィニヨン・ブランピノ・ノワール、シラーの評価が高まっています。

 

Walker Bay:ウォーカー・ベイ地区

2004年にオーヴァーバーグ地区から独立した地域。ホエールウォッチングで有名なヘルマナスの港町を中心に広がる南アフリカで最も冷涼な生産地域の一つ。

 

西端のボット・リヴァー小地区はエルギン地区の東側と接し、ボット・リヴァーラグーンと呼ばれる広い渓谷で海洋性気候を有しています。

土壌はボッケフェルト頁岩と砂岩が中心でシュナン・ブランやシラーが有名です。他にもピノ・タージュやローヌ系品種も多く植樹されています。

 

ヘルマナスの北側に位置する渓谷へメル・アン・アールダは小さい産地ではありますが、海からの距離が数kmと近く多様な微小気候が存在しています。

海側から内陸へ順にヴァレー(へメル・アン・アールダ・ヴァレー)、アッパー(アッパー・へメル・アン・アールダ・ヴァレー)、リッジ(へメル・アン・アールダ・リッジ)と3つの小地区に細分化されています。

 

これら小地区ではボッケフェルト頁岩が中心ですが、テーブルマウンテン砂岩や花崗岩などの土壌の構成比率が大きく異なる点、渓谷の構造による海からの影響の違い、標高差からそのように分類されています。

 

高品質なピノ・ノワールシャルドネの産地として世界的に高い評価を得ている生産地域です。

 

Cape Agulhas:ケープ・アガラス地区

南アフリカ最南端に位置する生産地域。元は牛や羊の飼育や穀物栽培が主でしたが、1996年よりブドウの植栽が開始さました。

 

大西洋とインド洋を分ける岬「アガラス岬」の名前を冠する極めて冷涼な海洋性気候。沿岸部は非常に冷たい風が強く吹きつけるため、少し内陸にはいったところにエリム小地区があります。

 

エリム小地区の土壌はコーヒークリップと呼ばれる鉄分が豊富な土壌や風化により砂利化した堆積岩が主で、そこに粘板岩や花崗岩、クオーツなども含み、世界で最も多様な土壌構成とも言われています。

なんとブドウ畑1haの中に5種類もの違う土壌が混在しているのだとか。

 

夏から収穫期にかけて吹く冷たい海風の影響で、ソーヴィニヨン・ブランの適地として知られています。他にセミヨンやシラーも特徴的な味わいがあり、可能性を期待されています。

エリム小地区は冷涼な気候と多様な土壌構成からアロマティックかつミネラル豊かでエレガントなスタイルが世界から注目されています。

 

これらの地区以外にもブッシュ・ヴァインに特化したことで注目を浴びている【Swellendam:スワレンダム地区】、ケープ・サウス・コースト最東端に位置し、冷涼さを生かしたシャルドネやピノ・ノワールが栽培される【Plettenberg Bay:プレタンバーグ・ベイ地区】など魅力たっぷりの生産地域が詰まった地域になります。

 

まとめ

いかがでしたか?

今回は南アフリカのケープ・サウス・コーストについて解説をさせていただきました。

 

まとめてみますと、

・南アフリカ最南端にあり、海流の影響が大きく、全般的に冷涼な生産地域。

・海あり、山あり、多様な土壌構成あり、多様なミクロクリマが存在している。

・世界から注目されており、今後の展望に大きく期待が寄せられている。

 

世界各国で温暖化の影響によりブドウの酸度が保ちにくい状況にあります。ACブルゴーニュのワインでも酸が穏やかで、アルコール度数が14%程度あるものもよく見かけるようになりました。

そのような中で、ケープ・サウス・コーストのワインはしっかりとした酸があり、エレガントな仕上がりのものが多くなっています。

 

また、価格の面ではフランスやイタリアなどのワインが高騰していくなかで、比較的リーズナブルに高品質のワインが手に入ります。このような点からも世界が注目するのは当たり前のことのように感じますね。

 

果実味たっぷりのワインも美味しいけれど、酸のしっかりしたいワインが欲しくなる時ってありませんか?そんな時、ケープ・サウス・コーストのことをふと思い出して手を伸ばしていただけたら幸いです。

 

ここまでご一読いただきありがとうございました。

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