【最終更新日】2024年5月8日
みなさんこんにちは。わいんとくすりです。
今回も前回に引き続き、南アフリカのワイン生産地域についてみていきたいと思います。
南アフリカのワイン生産地域は、ワイン法（Wine of Origin=W.O.）の1993年改訂にともない、西ケープ州、北ケープ州、クワズル・ナタール州、リンポポ州、東ケープ州、フリーステイト州の6つの「州域」（Geographical Unit）が誕生しました。
そのうちワイン生産の中心地である西ケープ州では、ブリード・リヴァー・ヴァレー、ケープ・サウスコースト、コースタル・リージョン、クレイン・カルー、オリファンツ・リヴァーの5つの地域（Region）が指定されています。
前回、前々回にコースタル・リージョンとケープ・サウス・コーストといった南アフリカワインにおける注目度の高い産地を紹介してきました。今回はその他の地域をお伝えできればと思います。
はじめにお断りになりますが、タイトルでマイナーな地域と記載はさせていただきましたが、この産地にも著名な生産者はおられますし、マイナーだなんてとんでもない、と言われる方もおられると思います。ですが、前述の2つの生産地域に比べると個人的にマイナーと思われたため、今回のタイトルとさせていただきました。
それでは、それぞれの「地域（Region）」と「地区（District）」を見ていきましょう。
南アフリカのワイン生産地域「マイナーな産地を覗いてみよう」
ブリード・リヴァー・ヴァレー概論
ソムリエ・ワインエキスパートの教本ではケープ・サウス・コーストより先に紹介されていますが、注目度はケープ・サウス・コーストの方が高い気がしています。
ブリード・リヴァー・ヴァレーはコースタル・リージョン東部とケープ・サウス・コーストの北側と接し、大陸性気候や高山性気候、温暖な地中海性気候を有しています。生産地は名前の通り、ブリード川沿いに広がっています。
降雨量は産地により差が大きいため、灌漑設備や発酵技術を早期から取り入れ、ブランデー産業とともに発展を遂げた地域でもあります。
主なブドウ品種は
赤ワイン用品種：ピノタージュ、シラー、カベルネ・ソーヴィニョン、サンソー
白ワイン用品種：コロンバール（主にブランデー用）、シュナン・ブラン、シャルドネ、セミヨン
これ以外にも多くのブドウ品種が生産されています。
Breedekloof：ブリードクルーフ地区
ブリードクルーフは2つの山脈に挟まれた渓谷で、多様な微小気候が存在しています。地中海性気候でありながら、西側の山脈が日陰を作るため、場所によっては冷涼さを感じるブドウが出来上がります。
ブリード川とその支流のおかげで水源に恵まれています。土壌は山間の起伏から川沿いにかけて砂や砂利が多めのローム質で、肥沃ですが、水はけが良くなっています。
主要品種は白がシュナン・ブラン、赤はピノタージュになります。この他にもローヌ系品種やシャルネド、リースリング、マルベック、ピノ・ノワールなど多様な品種が栽培されています。
Worcester：ウスター地区
ウスター地区はKWVブランデーの本拠地で有名です。降雨量が少なく、乾燥はしていますが、四方を山々に囲まれているため、豊富な水源が特徴。早くから点滴灌漑を取り入れたブドウ栽培が盛んに行われています。
主なブドウ品種は白がシュナン・ブラン、コロンバール、赤がピノタージュ、カベルネ・ソーヴィニョンです。
Robertson：ロバートソン地区
ロバートソン地区には南アフリカを代表するMCC（メトード・キャップ・クラシック）の生産者、グラハム・ベックの本拠地がある地域です。競走馬の飼育地やバラの産地としても知られています。
海から100kmほど内陸にあり、インド洋からブリード川沿いに吹く南東の風の影響で昼夜の寒暖差が大きくなります。土壌は非常に多様で砂質またはローム質の沖積土壌や粘土質が豊富な赤土系ローム、ボッケフェルト頁岩、さらには石灰質土壌も多く見受けられます。
主なブドウ品種は白がシャルドネやソービニョン・ブラン、赤はシラー、カベルネ・ソーヴィニョンなど土壌に合わせた多様な品種が栽培されています。
クレイン・カルー概論
クレインカルーは北にスワートバーグ山脈、南のランゲバーグ山系とオテニクア山脈に挟まれた約360kmの東西に長い地域。南側はケープ・サウス・コーストと接します。地区は2つしかありませんが、地区に属さない小地区が7つほどあります。
この地域もケープ・フォールド・ベルト上にあり、土壌はテーブルマウンテン砂岩やボッケフェルト頁岩が主体になります。冷涼な山間部や川沿いの傾斜地で高品質なブドウ栽培が行われています。
降雨量は少なく、乾燥した地中海性気候。地域を流れるブリード川が貴重な水源なのに加え、インド洋から吹き込む冷たく湿った南東の風がブドウに大きな影響を与えています。
主なブドウ品種は
赤ワイン用品種：シラー、カベルネ・ソーヴィニョン、ピノタージュ、ティンタ・バロッカ
白ワイン用品種：ミュスカ・ア・プティ・グラン、シュナン・ブラン、シャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン
となっています。
20世紀中期まではマスカット種であるミュスカ・ア・プティ・グランを使用した甘口ワインや、高品質なブランデーの産地として名を馳せていました。伝統的にポルトガル系品種も多く栽培されています。
Calitzdorp：カーリッツドールプ地区
カーリッツドールプ地区はクレイン・カルーの真ん中にある地域。
土壌はブリード川が作り上げた沖積土壌で、山間の起伏から川沿いにかけて砂や砂利が比較的多いローム層。肥沃ながらも水はけが良い。全体の約24％がポートスタイルのワインを生産しています。
基本的には降雨量が少なく、灌漑が必須。インド洋からの海風の影響で昼夜の寒暖差が大きく、ブドウの凝縮感を増しやすい特徴があります。
主要品種はティンタ・バロッカやティンタ・ロリス、トゥーリガ・ナショナルなどのポルトガルの黒系品種となっており、ポートスタイルの酒精強化ワインも有名。白はシャルドネやシュナン・ブランが多く栽培されています。
Langeberg-Garcia：ランゲバーグ・ガルシア地区
ランゲバーグ山脈の北側。標高400-500mほどの急峻な山肌に沿うようにブドウ畑が広がっています。山脈の北側に位置していますが、インド洋からの海風の恩恵により寒暖差がうまれます。降雨量は400mm以上。
場所によっては白亜質土壌があり、海からの影響と土壌の個性を活かしたソーヴィニョン・ブランが注目を集めています。ボルドー系品種など様々なブドウ栽培を始めたことでも話題になっています。
オリファンツ・リヴァー概論
オリファンツ・リヴァーは、スワートランドの北側に位置しており、オリファンツ川沿いに南北に広がる比較的温暖なエリア。南部地域には多くの山々が連なっている。柑橘類が有名なシトラスダル・ヴァレーを擁します。
気候は基本的には乾燥した地中海性気候で、大西洋からの海風の恩恵により、大きな寒暖差がうまれます。土壌はテーブルマウンテン砂岩とマルメスブリー頁岩が主体ですが、なだらかな丘陵地帯や平野では砂質沖積土壌から赤粘土のローム層と多彩な構成になっています。
北部は降雨量が200mm以下でオリファンツ川からの灌漑が必須となります。南下すると標高が高くなり、降雨量も増えていきます。シトラスダルでは400mm、山間部では700mmに及ぶこともあるようです。
主なブドウ品種は
赤ワイン用品種：グルナッシュ、シラー、ピノタージュ、カベルネ・ソービニョン
白ワイン用品種：シュナン・ブラン、ソーヴィニョン・ブラン、セミヨン、シャルドネ
となっています。
Citrusdal Valley：シトラスダル ヴァレー地区
シトラスダル・ヴァレーはシトラスダル・マウンテンと接する、より内陸に位置するエリア。
主体となる土壌はテーブルマウンテン砂岩とマルメスブリー頁岩からなるオリファンツ川が作り上げた沖積土壌です。山間部の起伏から川沿いにかけて砂質・砂利が多めのローム層となっており、肥沃ながらも水はけがよくなっています。
山間部の傾斜地で良質なブドウが栽培されており、主要品種は黒ブドウがカベルネ・ソーヴィニョン、シラー、グルナッシュ。白ブドウはシュナン・ブランやシャルドネ、コロンバールが多く栽培されています。コロンバールは他の地域同様にブランデー用に用いることが主です。
Citrusdal Mountain：シトラスダル・マウンテン地区
シトラスダル・ヴァレーの西側に位置し、標高500-700mの山の中腹にあるエリア。砂質はシトラスダル・ヴァレーと同様ですが、標高の違いから、より冷涼感のあるブドウが育ちます。
主要品種は黒ブドウがグルナッシュやシラーといったローヌ系品種にピノタージュ、白ブドウがシュナン・ブランやソーヴィニョン・ブランやセミヨンが栽培されています。
Piekenierskloof小地区では有機栽培が盛んに行われており、今なお1950年に植樹されたブドウ木からワインが作られており、南アフリカを代表する古木の産地として注目を集めています。
まとめ
いかがでしたか？
今回は南アフリカのマイナーなワイン産地を紹介してみました。
まとめてみますと
・ブリード・リヴァー・ヴァレーはMCCの代表的生産者を擁するエリア。スパークリングワインの品質に注目。
・クレイン・カルーはブランデーやポートタイプ酒精強化ワインが有名。
・オリファンツ・リヴァーはローヌ系品種が多く、古木から作られるワイン産地を有する注目度の高いエリア。
このようなところでしょうか。
マイナーとは言いますが、有名な生産者もこの地域でブドウ栽培を行っています。こういった産地で美味しいワインを見つけた時ってなんだか嬉しくなりますよね。
このような楽しみ方もあるのかなと思います。
南アフリカの記事、いかがでしたか？少しでも参考になれる点があれば幸いです。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
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