マスカット・ベーリーAとは?基礎知識とワインの特徴、合わせる料理

【最終更新日】2022年10月23日

マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A )は日本の新潟県が原産の黒ブドウ品種です。

日本国内で栽培されている赤ワイン用のブドウ品種としては最大の生産量を誇り、その半分以上が山梨県で栽培されています。

日本ワイン全体としても甲州種に次いで第2位、まさに日本を代表する黒ブドウ品種です。

 

マスカット・ベーリーAは昭和初期、川上善兵衛による品種改良で生み出された品種です。

2013年には、日本固有の黒ブドウ品種としては初めて、国際ブドウ・ワイン機構(O.I.V.)に登録されました。

 

果実と房は大きく、果皮は薄め、高温多湿や寒冷に耐え、病害に強いブドウで、生食用を兼ねています。

つくられるワインは、明るい色調にイチゴキャンディや綿菓子のような甘い香りを放ち、軽やかな果実味でフレッシュなタイプの赤ワインが主流です。

 

甲州種についてはこちらをご覧ください】

 

マスカット・ベーリーAの基礎知識

歴史・起源

明治時代に入り、日本では政府主導でワイン醸造が産業化され、日本各地でワイン生産が行われるようになっていきました。

しかし当時、欧米で広く栽培されていたブドウ種であるヴィニフェラ種やラブルスカ種は、日本の気候環境下では栽培が難しいものでした。

 

同じ頃、新潟県に生まれた川上善兵衛は、ワイン産業に興味を持つようになり、私財を投じて様々なブドウの苗木を輸入して栽培をはじめました。

1890年には新潟県上越市に「岩の原葡萄園」を創業し、ワイン醸造も開始したのですが、欧米のブドウ品種の栽培は思うようには行きませんでした。

岩の原葡萄園がある新潟県は寒く、この気候にも耐えられる品種がどうしても必要だったのです。


夏の季節は湿潤で、かつ厳しい冬の環境風土にも適したブドウを生み出すため、ブドウの品種改良にも取り組み、1万回を超える交配・交雑を繰り返すことになります。

そして1927年、マスカット・ベーリーAが開発され、1940年には生食・醸造用の推奨種として正式に発表されました。

マスカット・ベーリーAは晩霜に耐えられるように発芽が遅く、そして秋の霜にも対応できるように収穫期が早く来るのです。

 

マスカット・ベーリーAは、アメリカ系ラブルスカ種のベーリー(Bailey)とヨーロッパ系ヴィニフェラ種のマスカット・ハンブルク( Muscat of Hamburg)の交雑による品種です。

ちなみに、マスカット・ベーリーBも生み出されたらしいのですが、結果としてはBよりもAのほうが適格として生き残ったようです。

 

正式発表後、マスカット・ベーリーAは全国各地で栽培されるようになりました。

現在では甲州種と同じく、山梨県が最大の生産地となっています。

2013年には国際ブドウ・ワイン機構(O.I.V.)にも登録され、各生産者が国際的な品質向上にも力を注いでいます。

 

なお、川上善兵衛はその後にもう一つの日本での有力な交配品種であるブラッククイーンの交配にも成功し、ビール、ワイン、ウイスキーの世界的な企業であるサントリーの設立にも大きく貢献することになります。

 

ワインの特徴

マスカット・ベーリーAからつくられるワインは、濃淡は明るめで鮮やかなルビー色をした外観、甘いキャンディやイチゴジャム、綿菓子のような熱した砂糖の香り、ほんのりと根菜や土のような香りを感じるものが多いです。

この甘い香りはマスカット・ベーリーAの親でもある、アメリカ系ラブルスカ種に特有のフォクシー・フレーバー(甘やかなアロマ)といわれています。

特にキャンディや綿菓子のような香りは、フラネオールやアントラニル酸メチルなどの香気成分による芳香であることがわかっています。

 

近年では、これらの香気成分をどのように取り扱うかによってワインの香りや味わいの印象が大きく異なるため、各生産者から重要視される成分になっています。

 

味わいとしては、アタックは優しく渋みは控えめで、中程度の酸味がありフレッシュでフルーティなものが多いでしょう。

つくられるワインのスタイルをみていくと、甘口ワインから辛口のスティルワイン、ロゼワインやスパークリングワイン、樽熟の有無など、多様な製法、アプローチがとられています。

マスカット・ベーリーAのポテンシャルをさらに引き出すべく、各生産者が工夫を凝らしていることがわかります。

 

主な生産地


ここまでにもご紹介したとおり、マスカット・ベーリーAの生産量は山梨県が最大で、全国の60%以上を占めています。

山梨県内では、山梨市、笛吹市、韮崎市が主要な産地として挙げられます。

 

山梨県に次いで生産量が多いのは、山形県です。

同県内において、日本ワインの原料として生産されるブドウで最多はデラウェア、次いでマスカット・ベーリーA、ナイアガラがあります。

山形県の内陸部、村山地域の朝日町のマスカット・ベーリーAは収穫時期が日本で最も遅く、近年は評価も高くなっています。

 

続く3番目は長野県です。

山形県のおよそ半分の量ですが、山梨県、山形県、長野県の3県で日本全国の85%以上の生産量となります。

長野県では、中西部にある松本盆地、その南に位置する塩尻市でつくられるマスカット・ベーリーAが評価を高めています。

 

合わせる料理、ペアリング

マスカット・ベーリーAは、控えめな渋みと軽やかな果実味、かすかに根菜や醤油のようなニュアンスを伴うことも多いため、醤油やみりん、ダシなどを使った和食と相性が良いといわれています。

例えば、タレの焼き鳥や肉じゃが、ウナギのかば焼きなどがおすすめです。

樽熟タイプであれば、すき焼きや鶏の照り焼きなど少し濃いめの肉料理も良いでしょう。

 

また、特徴的な甘みのある香りを活かしたロゼやスパークリングワインであれば、中華料理やエスニック料理などと幅広くペアリングできます。

例えば、エビチリやガパオ、パッタイなどの少し甘辛味がある料理でも、ワインが優しく爽やかに受け止めてくれるでしょう。

 

マスカット・ベーリーAは味わいとしての個性はそこまで強くないため、様々な料理と合わせやすくフードフレンドリーな品種ともいえます。

日本ワインといえば、やはり地産地消型のペアリングがおすすめの典型ですが、異国料理ともマッチすることは多く、様々な組み合わせを試してみるとマスカット・ベーリーAの新たな一面を発見できるかもしれません。

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